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写真1枚で受入判断、救急DXで変わった札幌市地域密着型中小病院の現場

新川新道整形外科病院 理事長・院長 庄司太郎 先生|第1回ウェビナー全国4都市の実践者が語る「デジタル救命時代の、“いのちを救う”DXを知っていますか?」発表ダイジェスト


サマリー

  • 整形外科単科・60床の中小病院ながら、救急車受入件数は2020年度の104件から2025年度は512件へと5年で約5倍に増加

  • 救急医療情報システムの活用により、電話口頭での「根掘り葉掘り」の問診が不要となり、写真・データによる視覚的な受入判断が可能に

  • 開放骨折・熱傷といった従来なら受入を躊躇していた症例でも、写真でその程度を即座に確認できるようになり、対応可否を判断できるように


全国の消防本部で共通の課題となっているのが、救急要請から病院収容までの時間(救急車の現場待機時間)の延伸です。総務省の令和6年データによれば、救急車出動から病院収容までは全国平均で44.6分を要しており、現場到着時間の伸び(この20年で約3分強)に比べて、病院収容までの時間はこの20年で約15分近く延伸しています。

こうした中、北海道・札幌市で整形外科単科病院を運営する新川新道整形外科病院(理事長・院長 庄司太郎先生)は、救急医療情報システムを活用することで、電話口頭に頼らない「視覚的な情報共有」による受入判断の迅速化に取り組んでいます。

本記事では、中小病院という立場から見た救急医療DXの効果と、今後の広域連携に向けた展望についてご紹介します。

(※第1回ウェビナー 全国4都市の実践者が語る「デジタル救命時代の、“いのちを救う”DXを知っていますか?」発表内容より構成)


新川新道整形外科病院 概況

  • 所在地:北海道札幌市北区新川五条4丁目2-8

  • 診療科目:整形外科単科(整形外科医2〜3名体制)

  • 病床数:60床(急性期一般31床、地域包括29床)

  • 救急車受入件数:512件(令和7年度)

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<同院における救急車受け入れの現状>

5年で受入台数は約5倍に

同院の救急車受入件数は、2020年度の104件から、2021年度178件、2022年度285件、2023年度470件、2024年度404件、そして2025年度には512件と、着実に増加してきました。手術件数についても、2020年度の61件から2025年度は412件まで伸びています。

整形外科単科・60床という中小規模の病院でありながら、月間50台前後の救急車受入を実現している背景には、後述する救急医療情報システムの活用があります。

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<現場で感じる救急↔医療連携の課題>

「根掘り葉掘り」の問診が現場滞在時間を延ばす

救急隊からの受入照会に対し、医療機関側は年齢・性別・主訴・既往症に加え、認知症の有無、家族の付き添い、受診後独歩での帰宅可否等々、多岐にわたる質問を重ねた上で、電話対応スタッフが医師に確認を取り、その結果「満床」「多忙」「手術中」「対応困難」といった理由で受入を断らざるを得ないケースが繰り返されてきました。

総務省消防庁「令和7年版 救急救助の現況」によれば、病院収容時間は平均44.6分。この「現場待機時間」の長時間化は、患者・家族・救急隊すべてにとって大きな負担となります。

平成16年から令和6年までの推移を見ると、現場到着所要時間の伸びが3.4分にとどまる一方、病院収容所要時間は14.6分も延伸しており、病院側が担うべき使命として、救急車の現場待機時間の短縮が急務であることが浮き彫りになっています。

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<救急医療情報システム活用による変化>

電話での問診から、写真とデータによる「一目瞭然」の判断へ

新しい運用では、救急隊がシステムに入力したデータを事前に確認できるようになりました。年齢・性別・主訴・症状・既往歴に加え、マイナ救急連携による内服情報の確認、そして受傷部位の写真までも、救急隊到着前の段階で医療機関側が事前に把握できます。

これにより、電話口頭での時間のかかるやり取りが大幅に短縮されるとともに、伝言内容が現場と病院とで食い違う「情報のガラパゴス化」の防止にもつながっています。

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事例① 開放骨折(Gustilo-Anderson Type-1)の場合

従来の電話口頭でのやり取りでは、「挫創がどこにあるか」「骨折とつながっていないか」を口頭で確認するしかなく、現場の救急隊員も「現場では何とも言えません」としか答えられず、結果として「開放骨折かもしれないので、緊急手術が可能な大きな病院へ」という判断になりがちでした。

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新システムでは、送信された写真から創部を直接確認できます。今回のケースでは「1cm以下で汚染なし、感染率0〜2%程度のGustilo Type-1」と判断でき、一次的な閉創と待機手術での対応が可能と即座に判断。「当院へ搬送どうぞ」という受入回答につながりました。

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事例② 熱傷の場合

2歳女児が熱湯により受傷したケースでは、従来の電話口頭のやり取りでは「子どもであり、親御さんへの説明も必要になるかもしれないので、形成外科のある病院の方が」と、受入に慎重にならざるを得ない場面がありました。

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しかし新システムでは、送信された患部の写真から「広範囲ではなく、1度熱傷で発赤のみ」であることを確認でき、瘢痕が残る可能性も低いと判断。小児であっても中小病院での対応が可能と即座に回答できるようになりました。

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<今後の期待・課題>

確かな効果を生む一方で、運用を進める中で見えてきた課題

① 病院ごとのリアルタイム空床情報入力

更新の頻度が少ない大まかな応需入力システムだけでなく、各病院の当日の受入可能空床数を病院側からリアルタイムに発信できる仕組みがあれば、救急隊がせっかく問い合わせても満床で断られるケースを減らせる可能性があります。

② チャット機能

正式な受入了承後に、救急隊から伝え忘れた事項を病院へ伝言したり、逆に病院側が念のため確認したい事項を質問したりできるチャット機能があれば、より円滑な連携が期待できます。

③ 一斉搬送依頼の再考

搬送先決定に難渋する際の一斉搬送依頼は、返信スピードのみで受入先が決まる現行の仕組みでは、返信専属の人員を確保できる大病院が有利になりがちで、経営上人員確保が難しい中小病院には不利な面があります。空港の優先搭乗のグループ分けのように、病院規模ごとに2グループに分け、まず地域密着型中小病院グループへ一斉問い合わせを行い、そこで受入先が見つからない場合に大病院(総合病院)グループへ、といった段階的な仕組みが提案されています。

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<広域連携について(病院選択システム)>

札幌市がケガ・災害救急の当番となる際には、石狩・江別・北広島・千歳など周辺地域からの問い合わせもしばしば発生しています。同システムを近隣自治体にも導入し情報の見える化を進めることで、各地域内での解決率向上が期待できるとともに、札幌市内の病院でしか対応できない症例についてはその理由が明確になり、札幌市内の医療スタッフの使命感やモチベーション向上にもつながると考えられます。

また、病院数が限られ搬送先決定に難渋しやすい札幌市以外の地方の救急隊についても、隣接自治体や札幌市内病院への一斉搬送依頼という形で本システムを広域活用することで、搬送先が即座に決まる可能性が高まり、救急隊の労力と現場滞在時間の大幅な短縮につながることが期待されます。

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中小病院の現場から見えた、DXの本質的な価値

整形外科単科・60床という中小規模の病院であっても、視覚的な情報共有によって受入判断のスピードと精度を高められることが可能です。
本ウェビナーでは、

「本システムを使用・成熟させることで、近年伸び続けている病院収容所要時間の短縮の可能性は十分にある」

「DXを利用した広域連携により、搬送先決定に難渋する症例の減少にもつながる可能性がある」

「患者そして救急隊の現場待機時間の短縮は病院側の使命であり、引き続き努力を続けたい」

という展望が語られました。

今後、リアルタイムの空床情報共有や一斉搬送依頼の仕組みの見直し、近隣自治体との広域連携が進むことで、救急隊・患者・医療機関それぞれの負担軽減がさらに進むことが期待されます。

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(文責:TXP Medical株式会社 EMS Collection編集部)

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