SBIR AIホスピタル①:生成AIを用いた医療文書作成システムの構築(横須賀共済病院 様)

医療データで命を救う。生成AIで加速する、医療現場の働き方改革。

TXP Medicalは「医療データで命を救う。」をミッションのもと、医療現場に根差した生成AI活用の可能性を模索し続けています。急性期医療のプラットフォーム構築や医療データの利活用といった取り組みは、近年、社会全体でも注目されるテーマとなってきました。

近年の働き方改革の推進に伴い業務時間の削減が求められているものの、医療従事者の業務負担は増大の一途を辿っており、その負担の多くが医療文章作成によるものということが明らかになっています。※1)

こうした流れの中、内閣府は生成AIの開発・導入を進め、国際的な産業競争力の強化や国民の生活品質の向上を促進することが不可欠と定義しています。とくにヘルスケアデジタルツインにおいては、医療データの収集、標準化・加工、分析、分析結果の実務への応用とフィードバックといったサイクルのあらゆる場面で、生成AIがその実現を加速化する可能性を持つとしています。

TXP Medicalは、生成AIによる音声入力カルテや、レジストリ登録の自動化を可能にするシステムなど、医療現場の負担を軽減する生成AIプロダクトを開発して参りました。

現場起点で積み重ねてきた医療情報システムや生成AI技術の経験や、現実的な社会課題へのアプローチが一定の評価を受け、TXP Medicalは厚生労働省の「中小企業イノベーション創出事業」に参画するスタートアップの一つとして採択され、2024年よりプロジェクトが発足されました。本プロジェクトを通じ、大規模病院を研究開発のパートナーとして、より現場に即したプロダクトを開発・実証し、社会実装を果たしていくための環境が整いました。

本稿では、中央省庁の戦略的プロジェクトである戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)と中小企業イノベーション創出事業(SBIR)におけるTXP Medicalの取り組みなどについてご紹介いたします。SIPおよびSBIRの枠組みを活用し、通常の枠組みでは困難な大規模な医療機関との共同開発・実証を行っております。

※1) 病院勤務医の勤務実態調査  https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000331107.pdf

今回は長堀 薫 病院長に、生成AIの医療文書作成利活用の取り組みおよび今後の展望についてお話を伺いました。

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これまでの課題について:

私たちのような中規模以上の医療機関では、毎年膨大な数の医療文書が発生します。診断書や紹介状、特に退院サマリーの作成には1件につき約30分を要し、年間約2万人規模で発生します。とは言え、そのひとつひとつに時間と注意が必要なのです。
しかし現実には、その作業量が医師や看護師の本来の業務、つまり患者さんに向き合う時間を圧迫しているという課題がありました。
また、医療データは非常にセンシティブな情報ですので、院外にデータを出すことができないという制約もあります。文書の要約では済まされず、すべての診療情報を正確に記載する必要があるため、簡単に自動化できるものでもありません。

共同開発の経緯と、現在に至る道のりについて:

医師や看護師の業務負担は増大を続け、なかでも医療文書作成にかかる時間がその大半を占めており、今後の医療事業の進歩のために早急に解決すべきものとして取り組みを開始しました。
当院では、多忙な医師や看護師の業務を妨げることなく取り組むことを大切にしながら、研究開発を進めて参りました。

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入院から退院までの患者さんの診療情報をもとに、生成AIが退院サマリーや紹介状、診断書といった医療文書を自動で作成する仕組みを構築しています。これは、いわゆる要約AIとは違い、診療記録・初療記録・検査値・手術記録などの全情報を網羅した上で作られています。
UI設計においても、TXP Medical内の複数の医師が改修され、提案いただきました。また、AIに生成処理を全て任せるのではなく医師でもあるエンジニアが開発したアルゴリズムを組み合わせることで、当初は数分を要した生成処理を数秒に短縮するなど、医療現場のニーズに応える工夫をいただけたと思います。
PoCの段階では、カルテ情報の選別が十分でない部分もありましたが、社内の医師を中心としてアルゴリズム調整や最新モデルへの置き換えなどを実施され、実際の患者情報でも医療者側がストレスなく活用できる品質まで改良いただけたと思います。
また、私たちの病院ではインターネットを経由しないオンプレミス環境で運用しており、外部クラウドにデータを出すことなく安全に導入できました。これにより、既存の医療機関のIT環境を変更することなく始めることができたのも、大きなポイントです。

今後の展望と期待について:

TXP Medicalの生成AI自動医療文書作成システムは、医師の業務負担を大きく軽減する可能性を持ち、医療制度全体の効率化にも寄与する革新的な取り組みといえます。長期入院患者の診療情報提供書が数秒で自動生成されるのを目の当たりにして『これは医療の現場が変わる』と感動いたしました。
今後は、院内に設置したGPUサーバの活用の幅を広げて、オンプレミス完結型の自動レジストリ登録機能など、引き続き医療現場のニーズに応えた技術開発を期待しています。
また、生成AI医療システムの革新的な取り組みが求められる一方で、技術的進歩に制度が追いついていないという現場の課題意識は強く、今後の制度設計や運用指針の明確化が重要であると考えております。

SBIR(Small Business Innovation Research)とは

内閣府が司令塔となり、イノベーション創出に重きを置いた研究開発型スタートアップ等に対し、研究開発初期段階から政府調達・民間利用までを省庁横断して一貫支援するプロジェクトです。
弊社はSIP第2期(AIホスピタル事業)からBRIDGEの取り組みに続き、2024年度よりSBIRフェーズ3基金事業に取り組んでいます。
新SBIR制度について(内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局)
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/230316/sanko6.pdf

病院概要

横須賀共済病院は国家公務員共済組合連合会が運営する病院で明治39年に開設されました。
横須賀市、三浦半島における中核病院として、救急救命センター、NICU、CCU、ICUを有し、さらにがん診療連携拠点病院、周産期母子医療センター設置病院、地域医療支援病院、神奈川県災害医療拠点病院、神奈川DMAT指定病院、医師の卒後臨床研修指定病院として認可されています。
また、日本医療機能評価機構による病院機能評価(一般病院2:3rdG Ver.1.1)の認定を受けるなど、高水準の医療を提供されています。

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