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TXP Medicalの独自OCR技術が国際多施設共同研究で成果を創出 データ収集の効率化が、国際医学誌「Critical Care」に掲載 ~香港・オーストラリア・タイの大規模病院とTXP Medical株式会社の共同研究~

TXP Medical株式会社(東京都千代⽥区、代表取締役:園⽣智弘、以下 TXP)が香港大学、タイのシリラート病院、オーストラリアのプリンスチャールズ病院と共同で、集中治療室における光学文字認識(Optical Character Reader/Recognition, OCR)技術を用いたデータ記録効率化システムの開発に成功しました。このシステムは、高度な集中治療情報管理システム導入の有無に関わらず低コストで簡便に実施可能であり、臨床データ入力作業の大幅な効率化と精度向上につながる革新的な取り組みです。本研究成果は、救急・集中治療領域の主要国際医学誌「Critical Care」(インパクトファクター:8.8)に掲載されました。

本プロジェクトは11カ国、84施設のICUを含む「Asia-Pacific Extracorporeal Life Support Organization(APELSO、会長:市場晋吾教授)」との取り組みの一環でもあります。APELSOはELSOのアジア太平洋地域の事務局であり、今後は本システムを応用し、アジア太平洋地域の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の患者を対象とした共通レジストリの構築支援へと繋げていきます。

【論文の詳細】
Nitayavardhana P, Liu K, Fukaguchi K, et al. Streamlining Data Recording through Optical Character Recognition: A Prospective Multi-Center Study in Intensive Care Units. Crit Care. 2025;29(1):117.

【研究の背景】
集中治療領域では、生体モニター、人工呼吸器、体外式膜型人工肺(通称ECMO)、血液検査結果など、多種多様な医療機器から膨大な量のデータが生成されます。従来、これらのデータを臨床研究に活用する際、データは手作業で転記されており、医療従事者の貴重な時間を消費し、入力ミスのリスクも存在していました。例えば、広く使われている大規模な米国の集中治療データベースであるMIMIC-IVには、40,000以上の異なる変数が含まれています。このような状況を改善するため、OCR技術を活用した効率的なデータ入力システムの開発・実装を行いました。

【研究の概要】
本研究は、2023年4月から2024年2月にかけて、香港、タイ、オーストラリアの3か国の集中治療室で実施された前向き多施設観察研究です。研究対象は、侵襲的人工呼吸器と体外式膜型人工肺を必要とする重症患者としました。研究チームは、様々な医療機器に表示されているデータをスマートフォンで撮影し、OCRを活用して自動的に研究用データベースに取り込む技術を開発・検証しました。収集した項目は以下のとおりです。

生理学的モニター(血圧、心拍数、呼吸数、SpO2など)
血行動態モニター(心拍出量、肺動脈圧など)
人工呼吸器(呼吸モード、FiO2、PEEP、一回換気量など)
体外式膜型人工肺(ポンプ速度、血流量、圧力、温度など)
血液検査結果(血算、生化学、血液ガスなど)

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Nitayavardhana, P., Liu, K., Fukaguchi, K. et al. Streamlining data recording through optical character recognition: a prospective multi-center study in intensive care units. Crit Care. 2025;29(1):117. doi.org/10.1186/s13054-025-05347-1より引用

【主な研究結果】
開発したOCRシステムは、ICUモニターからのデータ読み取りにおいて95.3%~100%と非常に高い精度を達成しました。また、従来の手動データ入力と比較して、OCRベースのシステムを使用することで、患者一人あたりのデータ入力時間が43.9% (四分位27.0%-81.1%)削減と大幅に短縮されました。同様にシステムの使用者を対象としたアンケート調査(5段階 Likert scale)、登録時間の短縮に対する満足度が4.9±0.4、他者にも推薦できるかどうかが4.3±1.0など、高い満足度が示されました。

【今後の展望】
本研究チームは、このOCRベースのシステムが、特に資源が限られた新興国などの医療環境においても、大規模データの標準化された収集を促進し、ベンチマーキングや研究活動を支援する大きな可能性を持つと考えています。今後は、より多様な医療機器に対応するようシステムを拡張し、国際的な多施設レジストリの発展に貢献することを目指しています。



※本研究の結果はあくまでパイロット研究であり、引き続き効果検証を各地域で⾏っていきます。

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